平成27年度 あの花龍勢
- 2015/10/15
- 20:00
平成27年度 あの花龍勢
埼玉県秩父市吉田地区が1年で最も賑わいを見せる日のひとつ、10月の第2日曜日。今年は11日、龍勢祭が開かれました。あいにくの雨模様で始まりましたが、昼過ぎには雨は上がり観客も増え出しました。白煙をなびかせて秋空に舞う27流派の龍勢30本に観客たちが歓声をあげていました。今年は流派「武甲雲流」の龍勢師の皆さんに人気アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」をモチーフにした龍勢を作っていただきました!!
11日午前7時。椋神社では各流派の幣(ぬさ)が集められて、その前で、厳かに火打ち石から取り出したともしびがランプに移されました。小さくそれでいて強く発する炎は神輿で発射やぐらまで運ばれて、各龍勢の導火線点火に使われます。


☆☆☆~
正午前。椋神社前の道路を渡ったところにある龍勢置き場に今年の龍勢が並びます。そこにぶらさがった札「第拾五番」の横は、武甲雲流が作った龍勢が出番を待っています。「あの花」の仕様に作られています。しょい物として、アニメのエンブレムとして使われる丸みを帯びた花の形をあしらった直径60センチと1メートルの布や、緑色に塗られた長さ約1・5メートルの長方形の布が空に舞うように仕込まれています。

正午。武甲雲流の皆さんが置き場にやってきます。火薬が詰まった筒の発射口に鉄のくさびを回し込み、慎重に火薬を削り取っていきます。棟梁の小久保浩和さんが手に取って湿り気などを確認。ちいさくうなずきます。横にいる冨田創さんも「いい感じだ」とささやきます。
小久保さんは「ドキドキで家に帰りたい。1年間の結果が一瞬で決まる。見たいような見たくないような。あの花のファンのためにも成功させたい」と話します。
午後0時10分、出発。沿道では、観客のほか龍勢サポーターズたちも写真を撮ったり、のぼりを持って歩いたりしてわくわくする気持ちを龍勢師の皆さんと分かち合います。


午後0時半、発射やぐら手前の控え場所に到着。「取っちゃおか」小久保さんのかけ声で、仲間たちが龍勢が雨に濡れないよう付けられた保護布を外します。冨田さんは龍勢の下から潜り込み、しょい物や導火線の配線などの最終チェックをします。直前には、流派「桜龍会」の龍勢が見事な弧を描いて上空を舞います。

午後0時40分、武甲雲流の皆さんが発射やぐら下まで運び込みます。小久保さんは「心臓が表に出ていないかみてくれねぇか」と冗談を飛ばします。仲間で意見をぶつけ合い試行錯誤を繰り返して一つの形になった今年の龍勢。「あの花」企画も加わり、緊張や期待が一段と膨らみます。
やぐらの上に龍勢がロープにひっかけられつるしあげられていきます。取り付け作業をする武甲雲流の遠田さんは「アニメファンも見てくれる。緊張感が違う」と話します。


午後0時50分、武甲雲流の加藤博之さんがやぐらの上で幣(ぬさ)を振って、口上を叫びます。頭を保護するヘルメットには父喜一さんの名前が刻まれています。加藤さんは龍勢を作って3年目。喜一さんは加藤さんか参加する2年前まで武甲雲流の龍勢師、棟梁も務めました。しかし、突然、がんを宣告され、治療を始めました。それでも龍勢づくりはやめませんでした。流派の後輩に言い残したいことがたくさんあると、龍勢づくりを続けました。先輩から教えてもらったこと、自分が学んだことを後輩にすべて伝えきりたいとの思いだったそうです。

加藤さんは地元・横瀬にいなかったり地域行事のほかの役職に就いていたりと、龍勢づくりに参加できない期間があり、喜一さんと一緒に龍勢をつくることはありません。いまは小久保さんら先輩から龍勢づくりを教わっています。喜一さんの技も含まれています。「いろいろ学ばせてもらい、また次の世代に武甲の技を伝えたい」やぐらの上では、そんな思いで口上を読み上げます。
あの花龍勢に着火!!
爆音を響かせ、黄色い煙をなびかせ勢いよく上がります。が、残念ながら思ったよりも高さがでません。
龍勢は成功しても失敗しても、秋空に舞い上がる様は観客たちの心をひきつけます。龍勢師たちは来年に向けて新しいアイデアを持ち寄り、部材となる松や竹を探そうと動き始めています。今年の結果を糧にそれぞれの理想を目指して。
☆☆☆~
今年、新たな取り組みとして、祭り中、本部近くに龍勢展示スペースを設けました。火薬を詰めない以外はほぼ本物に沿った龍勢です。多くの観客は龍勢が打ち上がる度にやってきて、その構造や仕組みを見て楽しんでいました。龍勢サポーターズも保存会の皆さんたちから教えてもらった知識を観客に伝えました。「あれほど勢い良く飛ぶロケットの仕組みが知りたい」「大金をかけてプロがつくっているんじゃないの」などといろんな疑問の声が聞かれました。来年も是非、足を運んでもらい、さらに盛り上がる祭りになればと思います。

祭りの終盤、桜龍会のメンバーが作った「赤猫にゃんにゃん」の神輿が会場から龍勢会館まで巡行しました。ちびっ子も、大学生も、○○な連中も、みんな大興奮!!龍勢がメインなんだけど・・・龍勢会館までえらい盛り上がってました・・・・どこかこのねこ、どっかの地縛霊の猫にそっくりだね!?

(文・写真 はなのいろ)
※危険区域内では、保存会の許可を得て撮影しています
埼玉県秩父市吉田地区が1年で最も賑わいを見せる日のひとつ、10月の第2日曜日。今年は11日、龍勢祭が開かれました。あいにくの雨模様で始まりましたが、昼過ぎには雨は上がり観客も増え出しました。白煙をなびかせて秋空に舞う27流派の龍勢30本に観客たちが歓声をあげていました。今年は流派「武甲雲流」の龍勢師の皆さんに人気アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」をモチーフにした龍勢を作っていただきました!!
11日午前7時。椋神社では各流派の幣(ぬさ)が集められて、その前で、厳かに火打ち石から取り出したともしびがランプに移されました。小さくそれでいて強く発する炎は神輿で発射やぐらまで運ばれて、各龍勢の導火線点火に使われます。


☆☆☆~
正午前。椋神社前の道路を渡ったところにある龍勢置き場に今年の龍勢が並びます。そこにぶらさがった札「第拾五番」の横は、武甲雲流が作った龍勢が出番を待っています。「あの花」の仕様に作られています。しょい物として、アニメのエンブレムとして使われる丸みを帯びた花の形をあしらった直径60センチと1メートルの布や、緑色に塗られた長さ約1・5メートルの長方形の布が空に舞うように仕込まれています。

正午。武甲雲流の皆さんが置き場にやってきます。火薬が詰まった筒の発射口に鉄のくさびを回し込み、慎重に火薬を削り取っていきます。棟梁の小久保浩和さんが手に取って湿り気などを確認。ちいさくうなずきます。横にいる冨田創さんも「いい感じだ」とささやきます。
小久保さんは「ドキドキで家に帰りたい。1年間の結果が一瞬で決まる。見たいような見たくないような。あの花のファンのためにも成功させたい」と話します。
午後0時10分、出発。沿道では、観客のほか龍勢サポーターズたちも写真を撮ったり、のぼりを持って歩いたりしてわくわくする気持ちを龍勢師の皆さんと分かち合います。


午後0時半、発射やぐら手前の控え場所に到着。「取っちゃおか」小久保さんのかけ声で、仲間たちが龍勢が雨に濡れないよう付けられた保護布を外します。冨田さんは龍勢の下から潜り込み、しょい物や導火線の配線などの最終チェックをします。直前には、流派「桜龍会」の龍勢が見事な弧を描いて上空を舞います。

午後0時40分、武甲雲流の皆さんが発射やぐら下まで運び込みます。小久保さんは「心臓が表に出ていないかみてくれねぇか」と冗談を飛ばします。仲間で意見をぶつけ合い試行錯誤を繰り返して一つの形になった今年の龍勢。「あの花」企画も加わり、緊張や期待が一段と膨らみます。
やぐらの上に龍勢がロープにひっかけられつるしあげられていきます。取り付け作業をする武甲雲流の遠田さんは「アニメファンも見てくれる。緊張感が違う」と話します。


午後0時50分、武甲雲流の加藤博之さんがやぐらの上で幣(ぬさ)を振って、口上を叫びます。頭を保護するヘルメットには父喜一さんの名前が刻まれています。加藤さんは龍勢を作って3年目。喜一さんは加藤さんか参加する2年前まで武甲雲流の龍勢師、棟梁も務めました。しかし、突然、がんを宣告され、治療を始めました。それでも龍勢づくりはやめませんでした。流派の後輩に言い残したいことがたくさんあると、龍勢づくりを続けました。先輩から教えてもらったこと、自分が学んだことを後輩にすべて伝えきりたいとの思いだったそうです。

加藤さんは地元・横瀬にいなかったり地域行事のほかの役職に就いていたりと、龍勢づくりに参加できない期間があり、喜一さんと一緒に龍勢をつくることはありません。いまは小久保さんら先輩から龍勢づくりを教わっています。喜一さんの技も含まれています。「いろいろ学ばせてもらい、また次の世代に武甲の技を伝えたい」やぐらの上では、そんな思いで口上を読み上げます。
あの花龍勢に着火!!
爆音を響かせ、黄色い煙をなびかせ勢いよく上がります。が、残念ながら思ったよりも高さがでません。
龍勢は成功しても失敗しても、秋空に舞い上がる様は観客たちの心をひきつけます。龍勢師たちは来年に向けて新しいアイデアを持ち寄り、部材となる松や竹を探そうと動き始めています。今年の結果を糧にそれぞれの理想を目指して。
☆☆☆~
今年、新たな取り組みとして、祭り中、本部近くに龍勢展示スペースを設けました。火薬を詰めない以外はほぼ本物に沿った龍勢です。多くの観客は龍勢が打ち上がる度にやってきて、その構造や仕組みを見て楽しんでいました。龍勢サポーターズも保存会の皆さんたちから教えてもらった知識を観客に伝えました。「あれほど勢い良く飛ぶロケットの仕組みが知りたい」「大金をかけてプロがつくっているんじゃないの」などといろんな疑問の声が聞かれました。来年も是非、足を運んでもらい、さらに盛り上がる祭りになればと思います。

祭りの終盤、桜龍会のメンバーが作った「赤猫にゃんにゃん」の神輿が会場から龍勢会館まで巡行しました。ちびっ子も、大学生も、○○な連中も、みんな大興奮!!龍勢がメインなんだけど・・・龍勢会館までえらい盛り上がってました・・・・どこかこのねこ、どっかの地縛霊の猫にそっくりだね!?

(文・写真 はなのいろ)
※危険区域内では、保存会の許可を得て撮影しています
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