各流派巡り~笑和雲流・与五郎流・藤舞流・青雲流~
- 2023/09/27
- 22:43
暑さ寒さも彼岸まで?
龍勢サポーターズの活動のため、24日夜明け前、半袖姿で自宅を出ると、思いの外、寒い。埼玉・秩父吉田地区はもっと冷えていそうだ。慌てて長袖のフリースを抱えて、車に乗り込む。
早めに着いた龍勢会館の駐車場でうとうと。仲間と待ち合わせの午前9時半前に目覚めると、じっとり汗がにじむ。日が昇った後はまだまだ暑い。
午前11時ごろ笑和雲流さんの作業を見学させてもらった。龍勢師は8人。年齢層は幅広い。汗を流しながら、タガかけをしていた。タガは竹ひごを輪状に編んだもの。
龍勢のエンジン部(火薬筒)は、火薬を詰めるために二つに割って空洞に彫った松。タガはその松を締めるために10個程度が木づちで打ち込まれていった。円錐状になった火薬筒を締めるため、微妙に内径の違うタガが必要だった。
地面にはいくつものタガが転がっていた。杉山幸男さん(74)たちは火薬筒にタガをはめたり外したり。内径がぴったりのタガが見つかると木づちで打ち込んでいった。
笑和雲流さんの打ち上げは、コロナ禍だったこともあり4年ぶり。杉山さんは「久しぶりの打ち上げ。うまく上がれば気分がいいね」と話した。
作業には女性の姿も。杉山萌子さん(32)は7年ほど前から龍勢造りに参加する。叔父も父も龍勢師。子どものころから秋になると、色とりどりの龍勢が空に飛び上がる姿を見続けてきた。「性別に関係なく、年頃になったらやるものだ」と、流派の作業に参加した。龍勢を造る流派になくなてならない火薬類の「製造保安責任者」の資格を取得。「龍勢造りは毎年9、10月に味わえる楽しみです」
午後になっても日差しは強い。与五郎流さんでもタガかけ作業の真っ最中だった。
「今年は荷離しの美しさにこだわりたい」と棟梁の井沢英法さん(52)は話した。昨年、龍勢はうまく打ち上がったが、荷離しが想定よりも遅れた。そのため、空に放った唐傘の舞いがイメージと大きく違った。ずれはほんの1秒か2秒。噴射口の径や導火線の長さの微妙な違いだ。
「今年はその補正に、仲間全員の眼と手業で集中する」
藤舞流さんでは、「カンカン」と何かをたたく高い音が響いていた。
火薬詰め前の火薬筒に下地となる粘土を打ち込む練習の音だった。その横では別の龍勢師たちが粉に水をしめらせて粘土を作っていた。
火薬を松に木づちで打ち込む「詰め」作業は危険なため、打ち上げ櫓近くの「作業所」でおこなうのがルールだ。ただ、粘土を打ち込むのはどこでもできる。
その練習には鉄製の打ち込み練習台を使っていた。「毎年、1年ぶりの詰め作業をぶっつけ本番でやるのは大変だ」と機械部品を扱う仕事の秋元清市さん(67)が8年前に作った。「25日が火薬詰めの本番。その前にどんどん練習してもらって勘を取り戻してもらう」
青雲流さんの龍勢師たちは、立てた火薬筒の回りで何人もの龍勢師が立ちながらタガを編んで、タガをかける作業をしていた。流派の打ち上げは4年ぶりだ。
棟梁の小杉幸正さん(49)は今回「飛び出す威力にこだわりたい」と話した。青雲流では14年前に、龍勢がそれまでで最も力強く飛び出し、大成功した。今年は、その当時の構造を参考にして「打ち上げ大成功」に挑む。
龍勢祭本番まで、残りの週末はあと1回。各流派の作業は大詰めを迎える。
祭り会場に桟敷席を設けた通常開催は4年ぶり。打ち上げを楽しみにする見物客でどれだけにぎやかになるか楽しみだ。
午後5時すぎ、龍勢サポーターズの打ち合わせを終えて、外に出るとさすがに肌寒い。龍勢の出来栄えは大事だが、みなさん、体調管理には十分ご注意ください。
文・写真 うえだ
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